梅田スカイビル
キタといえば、大阪の梅田。
ミナミとならぶ、関西地方において最も栄えた商業都市の中心地です。
大阪と聞くと、どことなく庶民的な、下町感のある街並みが多いイメージですが、1980(昭和55)年ごろからどんどん都会的な建物が建設されています。
そのうちの代表的な建築の1つが、今日ご紹介する「梅田スカイビル」です。
梅田駅のすぐそばにある超モダンなビル建築です。
今ではこの梅田スカイビルは大阪のランドマークとなっています。
このビルは企業の本社があったり、領事館があったり、カフェがあったり、さらにはマツダのショールームがあったりと、幅広く活用されています。
また、ご存知の方も多いと思いますが、最上階層には巨大な空中展望台があり、観光スポットやデートスポットとしてもかなり有名です。
そして、実はあまり知られていないのが、「全日本タワー協議会」にビルとして名を連ねる日本唯一のビルディングでもあります。
そのため、「梅田スカイビルはタワーに含まれるのか」という議論に対し、「含まれる派」の最大の論拠となり得ます。
まぁ、そんなことはさておき、今回はこの梅田スカイビルについて解説していきます。
竣工は1993(平成5)年で、バブルが終結したあたりのことです。
この建物は当時でも、そして今でも、かなり奇抜なデザインとなっています。
なにせ、2つのビルの間に、空に浮かぶ巨大な空中展望台を作っているのですから。
このような奇抜な外観デザインの建物が増えてきたということは、それだけ建築技術が進歩したといえます。
梅田スカイビルは、ぱっと見、パリの凱旋門のような形をしているビルです。
凱旋門と大きく違うのは、ビル自体の高さと、なによりも、空中展望台の中心に空いた直径30mほどの巨大な穴です。
そしてこの穴の間に、空中を突っ切るエスカレーターが設置されています。
また4面鏡張りのシースルーエレベーターもあり、高所恐怖症の人にとっては地獄のような場所となっています。
特に空中を突っ切るエスカレーターに関しては、「どうやって設置したんだろう・・・」と非常に疑問に思ってしまいます。
こういったことができるのは、やはり建築技術の進歩と言わざるを得ません。
そしてそれがすでに27年前にできていたのだから圧巻です。
筆者は、大学時代にこの場所に行ったことがありますが、内装な非常に清潔で近未来的な感じです。
正直な話、少し迷子になりそうでした。
展望台の下の階層にはオシャレなカフェがあり、デートなどにも持ってこいの場所だなぁと感じました。
超高層ビルが立ち上がる場所として、中国やドバイが有名ですが、この梅田ビルもトンデモ度合いでは負けていないような気がします。
また、実はこのビル、設計の初期段階では、2棟ではなく3棟連結型だったのです。
つまり、初期段階ではさらに複雑な構造を造ろうとしていたということです。
それができていたら、もっとトンデモナイ建物が出来上がっていたのでしょう。
建物内の天井には、3棟つながっている建物のような装飾があり、少し3棟設計の名残を感じます。
しかしながら、2棟だとしても、巨大な穴の空いた空中庭園、その穴を突っ切る空中エスカレーターなど、発想力とそれを実現させる技術力には脱帽するしかありません。
そして、それを実現させた設計者は、原広司氏です。
原氏は1936(昭和11)年に神奈川県で生まれ、学生時代は東京大学工学部に所属していました。
現在は東京大学名誉教授をされています。
日本建築学会賞作品賞・大賞と村野藤吾賞を受賞されています。
そして、世界初の連結超高層ビルとして梅田スカイビルを誕生させています。
また、京都駅ビルや札幌ドームなど、多くの著名なモダン建築を手掛けてました。
手掛けた作品の数は有に50を超えます。
さて、梅田スカイビルですが、地上40階・地下2階、高さ約173メートルの超高層ビルとなっています。
その独特の形状から、大阪のランドマークとなっています。
このビルはイギリスの出版社ドーリング・キンダースリーが選ぶ「TOP 20 BUILDINGS AROUND THE WORLD」の一つに選ばれました。
共に選出された建築物は下記の通りです。
・タージ・マハル
・アヤソフィア
・シドニー・オペラハウス
・サン・マルコ寺院
・フラットアイアンビル
・クラック・デ・シュヴァリエ
・ボドリアン図書館
・ビルバオ・グッゲンハイム美術館
・メヘラーンガル砦
・ウェストミンスター宮殿
・メキシコシティ・メトロポリタン大聖堂
・ポンピドゥー・センター
・サグラダ・ファミリア
・パルテノン神殿
・コロッセオ
・アンコール・ワット
・ブルジュ・アル・アラブ
・トランスアメリカ・ピラミッド
・ハッサン 2 世モスク
おそらく、あなたも一度は耳にしたことがある建築物が複数あるのではないでしょうか?
歴史的価値のある建築がずらりです。
つまり、この梅田スカイビルは、歴史的価値のある超有名建築物と並ぶほどの価値を持つモダン建築ということになります。
そして、この選出をきっかけに、外国人旅行客が多く訪れるようになりました。
2017(平成29)年の空中庭園の入場者150万人のうち、外国人は75%を占める約113万人にまで達していました。
このビルは、タワーイースト(東棟)、タワーウエスト(西棟)の2棟で構成され、その頂部を連結するように、円形の空中庭園展望台を設置した構造が特徴です。
これにより地震、風、振動への耐性が強化されています。
また、不思議なのは、「いったいどうやってあの巨大な空中庭園を造り上げたのか」ということです。
実は、この空中庭園は一度地上で組み立ててからワイヤーロープでつり上げる「リフトアップ工法」で施工されています。
イースト・ウエスト両棟を行き来するために、22階に連絡通路が設けられています。
ビル最上部の有料の空中庭園展望台からは、梅田を中心とした大阪の都心と遠景を一望できます。
超高層ビルの展望台としては珍しく屋上に設置され、360度の視界と全天を風を感じながら眺められる展望台は、観光スポットとして非常に人気があります。
またインスタ映えスポットもあるようです。
開業15年目の2008(平成20)年5月5日には、入場者数が1000万人を突破し、2015(平成27)年7月31日には1500万人に到達しています。
空中庭園展望台には「空中庭園大明神」を祀る社があり、御利益は恋愛成就だそうです。
この建物の建築主は積水ハウスです。
そのため、タワーイースト内に積水ハウスが本社を置いています。
また、最近ニュースで度々耳にする外資系医療薬品企業「アストラゼネカ」の日本本社も入居していましたが、現在は一部を残しグランフロント大阪へ移転しました。
タワーウエストの上層階は、当地が旧本社工場敷地であったダイハツディーゼルと東芝関西支社をはじめとする東芝グループ企業の事務所が大半を占めています。
タワーイーストには、シネ・リーブル梅田(3階)と梅田ガーデンシネマ(4階)の映画館があったのですが、2014(平成26)年2月28日に梅田ガーデンシネマが閉館しています。
跡地はシネ・リーブル梅田の増床として、3・4階に跨る4スクリーンの映画館になりました。
1階には2016(平成28)年1月29日に、マツダの直営ショールームである「マツダブランドスペース大阪」がオープンしています。
また、メキシコ名誉領事館とドイツ総領事館が入居していることから、1階広場「ワンダースクエア」で各領事館主催の祭りが例年開催されます。
フィエスタ・メヒカナとドイツ・クリスマスマーケットです。
地下1階は、昭和初期の町並みを再現した飲食店街「滝見小路」となっており、展望したあとに食べたり飲んだりとこの場所だけで十分楽しめるビル設計となっています。
タワーイースト1階と屋外のバス駐車場には、WILLER GROUPのバスターミナル「WILLERバスターミナル大阪梅田」が設置されています。
このグループの高速バスや一般路線バスなどが乗り入れているほか、2013(平成25)年7月31日には、駐車場付近に、バス利用者向けのカフェレストラン「WILLER EXPRESS CAFE」がオープンしています。
一般のビル関係者も利用することができるようです。
また、タワーイースト・タワーウエストに比べ目立たないのですが、タワーイーストの南には5階建てのガーデン・ファイブ(北棟)、さらにその南には6階建てのガーデン・シックス(南棟)というオフィスビルもあります。
両者のエントランスには「UMEDA SKY BLDG」のロゴが記されているので、この2棟も梅田スカイビルに含まれるものといえるでしょう。
とにもかくにも、一度は梅田スカイビルの空中展望台から、360度大阪の市内を見渡してみるのをお勧めします。
晴れた日の昼に行けば、明るい開放的な大阪の街が見渡せますし、雨の日でもまた違った表情が見られます。
夜に行けば、とてもきれいな夜景が見られます。
また、梅田スカイビルのツアーガイドも行っているようなので、そちらに参加してみると、より一層このビルのことがわかるでしょう。
原氏は京都駅ビルも設計しています。
大阪梅田から30分ほどで行けるので、こちらも併せて行ってみるのも良いでしょう。
建築構造上、かなり共通点が多いので、梅田スカイビルと京都駅ビルを見比べてみるのも面白いかもしれません。
京都駅ビルの構造もかなり工夫されていて面白いですよ。